こどもじゃあるまいし!
もう大人なんだから
昔、障がいのある子もない子も参加できる市民ミュージカルに出演していた時のこと(すでに話がだいぶ特定された)。
一般的に好ましい表現で言うとinclusiveインクルーシブというもの。いんくるーしぶも“障がいのある子もない子も”という表現が個人的に気に入らないのはさておき。
最後の通し稽古のこと。大人役者さんが一人時間になっても稽古場に帰ってこない。歌の個人レッスン後に稽古場を飛び出したきりらしい。結構重要なポジション。こどもたちは待っている。大人たちは焦り、運営側は明らかに苛立っている。この役者さんにとって、こういういわゆる「たてつく」というのは初めてではなかったのだ。
それにしても最後の稽古、1週間後には本番だ。わたしは焦るというより正直呆れていた。「こどもじゃあるまいし!もう大人なんだから、こどもたちのことを考えてよ。」と言ってわたしも怒っていた。別の大人が探しに行った後、稽古に戻ってきたのか、そこはあまり覚えていない。ただ通し稽古は成り立たず、部分稽古になったような気がする。
「自分は嘘をつきたくない」
稽古施設のある場所はスーパーなどが併設されている。その日の帰りに偶然、かの役者さんに遭遇した(てことは多分稽古には最後まで来なかったのかな)。私はこどもたちに申し訳ない思いで怒っていた。怒りを抑えつつ「みんな心配したんですよー!」と明るく声をかけてみた。
彼/彼女(一応伏せる)曰く、歌のレッスンで、侮辱されるようなことを指導者から言われ、我慢ならなくなり飛び出したという。大人の理性を持って対処すれば、その場に留まることもできたかもしれない。だがそうしなかった。「自分は嘘をつきたくない。自分が馬鹿にされたというのに、それをなかったことにしてやり通す姿をこどもたちに見せたくない。だってこどももそういうもんだと思っちゃうじゃんこれからの人生。」といっていた。
一見、大人の考えのように見えて、プライドが高いとも言える。実際、こどもたちは多分残念ながら周りの大人の反応を見てあーまた勝手なことしてんだな、としか伝わっていなくてそういう強い思いが伝わらず、むしろ「ああいう大人になっちゃだめだ」くらいのマイナスプロモーションになっていたかもしれない。
当時それを聞いて、私の怒りがおさまったというより、なるほどこういう考えの大人もいるのかあって冷静に受け止めていたような。
今になってその話を私は思い出している。
僕は卒業した!
最近、ある劇団さんの代表Sさんが、「僕はもうあの件は卒業したんだ。」と言っていた。あの件、というのは、「ある人と絶縁する」と言っていた件についてだった。
Sさんは演劇のやり方というか演劇への信念が確固たるあまり、合わない人とは割と簡単に(そう見える)絶縁してしまう。自分の主張や拘りを曲げて誰かと合わせたり、表面上でも付き合いを保とうとしようともしない。かといって閉鎖的でもなく、むしろオープンな性格とも言える。
卒業とは、仲直りしたのか、もう考えないことにしたのか、結局よくわからないけど、「卒業した」というのを聞いて私は思わず吹き出した(本人がその場おらず伝聞だった)。「こどもだなあ。」と思った。なんだか堂々とSさんが卒業!宣言しているのが想像できた。かわいらしいというか、素直というか、そういういい意味で私は「こどもだなあ。」と思った。
義理や付き合いでやりたくないことをやったりしない。そういうスタンスで生きている大人は実は結構私の周りにはいるのだ。
私がそうなれなかった1番の理由は「いい人だと思われていたい=悪く思われたくない」他者からの社会的評価に必要以上に怯えていたからだと思う。波風はできるだけ立てず、中間の位置を取り、仲裁的な役回りをする。物心ついた時からそういう生き方だったし、それができない人を見るとちょっと見下していたというか。
自分の機嫌で周りを振り回すような人が大嫌いで絶対私はそうならないって思っていたけど、嫌いなものほど好き…とかいうように、憧れてはいたんだと思うそういう生き方に。
でも物事を中間的に見ているうちに、二面性だったり、クリティカルな見方をしたりするのがくせになり、それを人に、オブラートに包みながらではありながらも発信するようにはなっていった。それが今の私です。相変わらず小心者ではあるが社会的な評価はそこまで気にならなくなってきたので、いうことは結構言います。
芸術って何のためにあるのかすらん
芸術って、誰の中にもあるこども心を忘れないでいるための総合的な手段なのではないかなと最近思う。もちろん自分のような誰かにこんな想いが、考えが届くといいなみたいな伝達手段でもありながら、やっぱり自分の中の、説明のつかないナンセンスさを必死に表出しようとする大人の悪足掻きみたいな。
だから大人にこそ芸術が必要なのだ、というか芸術は大人が生み出したのだろう。こどもに芸術という概念は多分ほぼない。やっていることが全部ナンセンスで芸術だから。
見た目が大人になっちゃうと「こどもじゃあるまいし」「周りの空気を読め」とこども心は押し付けられ潰れていく。否が応でもそうなる。だからせめて、こどもがこどものうちは、ナンセンスのまま生きていて欲しいなと思うのです。センスよりもナンセンスを磨いたほうが、人生は結果的に生きやすい…いや生きにくいことの方が一見多そうだけど諸先輩型見ていると。
それでそのうち、自己肯定っていうより人生肯定して欲しいな。自分も他人も、みんな生きているってことがナンセンスで愉快だなと、感じる人生がいいな私は。
芸術はこどものためにあるのではなく、全人類がこどもであるためにあるのだ!
今日はここまで。
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